3月16日
家内と、
「ぼちぼち水を汲みに行かなきゃね」
なんて話をしていたら、
南に面したガラス戸でこつんと音がした。
何か、
たぶん鳥でも突っこんできたのだろうと直感的に思った。
このガラス戸には以前にもつばめが突っこんできたことがある。
ガラス戸には当然四囲の風景が映っているから、
鳥はそれを実際の風景と見間違うらしい。
決して、
家の中に入りたくて飛んでくるとは思えない。
つばめはデッキの上に脚を横に投げ出すようなかっこうで目を閉じていた。
よく見ると、
嘴のきわから血がにじみ出ていた。
羽をヒクヒクと動かしたものの、
それが最後だったらしい。
つばめ程の大きさで、
しかも高速で飛ぶ鳥なら、
ガラス戸にぶつかれば首の骨などおってしまったとも思える。
まだ温もりはあったが、
森の奥の見晴らしのいい場所に埋めてやった。
ウッドデッキにうずくまっていたのは、
なんとうぐいすだった。
そう言えば、
数日前からうぐいすが啼いていた。
昨年の春に巣立ったうぐいすが、
戻って来たものかもしれない。
うぐいすは脚を横に伸ばしたりせず、
ちゃんとうずくまったままだった。
嘴から血が出ているわけでもなく、
目を開いたり細めたりしていた。
どうやらぶつかったショックですぐには飛び立てなかったらしい。
手を差し伸べても逃げようとはしない。
そっと手のひらにのせてやったが、
相変わらず目を開いたり細めたりしている。
「こわかったんだよな。大丈夫だ、少し休めばきっと飛べるからな」
と、話しかけた。
頭を軽くなでてやると目を細める。
「今は、寝たらいかんよ。目をつぶると死んじまうぞ」
実際、私にはそんな心もとない気がしていたのだ。
少し落ち着いてきたようなので、
餌台の近くの木の枝に連れて行った。
彼は自分で木の枝にそろっと移った。
「ガラス戸には気をつけな。仲間にも言っておきな」
と言いながら指を近づけたら、
ふっと飛び立った。
そう言えば、
きょうは明け方に梟の啼く声を聞いた。