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Channel: KANTO's パン焼き人は荒です(^^♪
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加水100%?のチャパタ

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イメージ 1今は店頭に立つことは無いが、私の本業は、一応、本屋ということになっている。
なぜ「一応」なのかを説明すると厄介なので、ここでは触れない。

そういうわけで、頼んだわけではないが「パン」と表題にある本はたいてい私の目に触れることになる、と、そのことはこれまでにも何度か書いてきた。

私は、月に一度くらいの割でそうした書籍や雑誌、MOOKなどに目を通すわけだが、中には著者名とタイトルを見ただけで中を見ないで返品の山に返すものがある。
パン焼きにもいろいろとルールがあるわけだが、「パン生地をハンドミキサーで捏ねる」と書くような、そして敢てそれをミキサー炎上覚悟で試したがために、私のミキサーを破壊させた本の著者、いつも常識破りで話題を得ようとするF氏のものなどはまっすぐ返品の山である。

かつては数えられるほどのパンの研究者、実践者、そして評論者、それに翻訳もののパンのものがほとんどであったのが、近頃は、繁盛店やその店のパンの紹介などのMOOKが幅を利かせている。
そして、人気ブログの著者などの登場となる。
ホームページやブログを書いている人たちにとって、それが一冊の本になったらと願うのはごく当たり前のことと言ってもいいだろう。
控えめに、自分と友人だけのパンの本、わけてもレシピ本である。

そうして作られた本がさらに自費出版を専門にする出版社にピックアップされ、とりあえずそれらしい本に仕上げられる。
本は顔、つまりカバーで決まるような部分がある。
書店にとりあえずは入荷したとしても、たいていは即返品・Vターンとなる。
自費出版の本など、書店で売れることは稀というほかは無い。
だが、私のデスクには、実はその手のものと思われる本も紛れ込んでくる。

先日私がチェックした本は、近頃パン焼き人さんの中で話題の「高加水」で焼くパンの本で、これ自体は某社のチラシ広告の中に宣伝されていた本で、その時は手にしていない。
この本(あえて書名や著者名は書かない、迷惑がかかってはいかんからね)、のっけから粉と加水の量が同じ、つまり加水率100%というパンのレシピを扱っている。

そのレシピでは、水分の10%相当を、下剤と同じ成分が入っている高硬水としていろいろ取沙汰されている「コントレックス」で置き換えている。
「コントレックス」を入れるとパンにどんな効果があるのかについては、「コントレックスに含まれるミネラルが生地をひきしめてくれる」とあるだけである。
このミネラルとは、成分として突出しているカルシウムとマグネシウムのことらしい。これらのミネラルを大量に摂取すると下痢になることがあるらしい。

私は、パン焼きに当たっては余計なものは全て排除したがるもので、麦芽であるにすぎないモルトなども排除するのだが、ここでは「コントレックス」とともにモルトも排除した。

実際にためして見たレシピを書くと次のようになる。

準強力粉 E65 100g
サフインスタントドライイースト 0.3g
塩 2g
モルト代用のきび砂糖 2g
水 100g

塩、砂糖、水を溶け合わせた水分に、準強力粉とドライイーストを合わせた粉を少しずつ混ぜる。
このやり方なら、ひとまずドロドロの状態にはならないということらしい。

そのあとも、生地を休ませながらカードで生地をすくい取ってはぐるぐると重ねるなどの作業を繰り返して生地を作るのだが、それもホイロに入れて発酵させてしまえばミキサーで作った生地と同じようにベタベタの生地になる

これを「たっぷりの打ち粉」を振ったキャンパス地の上に出して四角く「成形」してスケッパーで切り分ける。
キャンパス地にいくらたっぷりの打ち粉をしてみても、やっぱり布地に水分が出てくっついてしまうことになる

「たっぷりの打ち粉」と「布地に出た水分」を考慮すれば、このチャパタは決して加水率100%とはならない。おそらく、80%程度のものだろう。
実際、この本にあるその他のパンレシピの大方は80%程度としてある。

イメージ 2

イメージ 3

案の定というか、当然というかパンの内層は穴だらけである。
バゲットにしろカンパーニュにしろ、
高加水パンということで目指しているのはこの大小の穴のあいたパンだろう。
こんなパンをお客さんに提供する勇気を私は持たない。

味はどうか。
コントレックスを入れなかったからということではないだろうが、
これはただのお行儀の悪いバゲットと変わらない。

パンの本を購入する時は、当然だが、よく内容を見てからにしたがいい。
まず、そんじょそこらではなかなか手に入らないような材料を頻繁に使うようなレシピの本は避けた方がいい。
敢てパン焼きの常識から外れたやり方を惹句にしているような著者の本は、結局得るものは無いようだということを知っておいた方がいい。

なお、ここで扱った本についてたとえ思い当たるところがあったとしても、ここで私の書いたことは私の感想であり、実際に焼いてみたパンについての所見であることを付け加えておきたい。

       

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