二月朔日の未明から降り出した雪は
まだ消えやらぬ一週間前の
そして三日前の
少し草臥れたような雪の上に積もった
水をたっぷり含んだぼた雪は
早朝の庭を再び三度真っ白に塗り込め
なお飽き足らず木々の梢に花を咲かせた
のんのんと降り続いて
雪掻きするそばから坂道を埋めて行く
動物の足跡が点々としている
狸じゃなさそうだ
いたちでもなさそう
猫か
梅の花の足跡
この辺りには十指に余る猫がいる
どれも野良で
どれも痩せている
それが庭の片隅の「コンポート」へ夜な夜なやって来ている
「コンポート」
プラスチックで出来ている生ごみ処理器
地面に深い穴を掘ってその上を塞ぐように乗せてある
蓋を開けて生ごみを入れて
たい肥促進剤を振りかけて置くといいたい肥が出来る
田舎では生ごみなどは自分で処理しなければならないのさ
さまざまな動物たちがコンポートの周りをほじくって餌をとる
周りに板囲いをして防ぐが
それでもやって来てはコンポートの下に手を入れて餌を引っ張り出す
板囲いもダメとなって
網をすっぽり被せた
「カントさんさぶいよ」と
ここにも猫が居た
「関東っちゃもっと温かいと思っていたのに」と
沖縄のシーサーたちも震えていた
「君たちもやっぱり猫族だな、獅子だも」
「本日は発電中止やな」
と太陽光発電パネルが呟いた
「何よ、ネトライキかよ」
「そう。あんたねぇ、残業代も払わんと長時間の見做し労働じゃも」
「カントさんに言っとくよ、やっていられるかって」
「あんさんがカントさんやろが」
「そっか、知っていたか(^^;」
「ふん、無責任な奴め」
「ぼくだって寒いよ」と
ちびトトロも訴える
「もうすぐ春だから、少しだけ我慢してな」
春雪前のぼた雪どか雪
西の坂道八十メートル
二時間かけてすっかり片づけた
なぜだか急に葛餅が食べたくなって来たぞ